社員が退職したときに必要な社会保険・雇用保険の手続を解説
社員が退職すると、会社では健康保険・厚生年金保険や雇用保険の資格喪失手続など、いくつかの手続が必要になります。
退職日が決まっていても、「資格喪失日はいつになるのか」「離職票は必ず必要なのか」「資格確認書はどうするのか」など、実際の手続では迷いやすい点も少なくありません。
また、退職日によって社会保険料の控除が変わることもあるため、退職手続と給与計算をあわせて確認することが大切です。
この記事では、社員が退職したときに会社が行う社会保険・雇用保険の手続と、実務上の注意点について分かりやすく解説します。
社員が退職したときに会社が確認すること
社員から退職の申し出があった場合、まずは退職日を明確にします。
社会保険や雇用保険の手続では、原則として「最終出勤日」ではなく「退職日」が重要になります。
たとえば、有給休暇を消化してから退職する場合には、最終出勤日と退職日が異なることがありますので注意しましょう。
会社では、退職日が確定したら、主に次の事項を確認していきます。
- 健康保険・厚生年金保険の加入状況
- 雇用保険の加入状況
- 離職票の交付希望
- 資格確認書等の返却
- 最終給与における社会保険料の控除
- 退職後の健康保険や年金についての案内
退職日が決まった段階から必要な手続を整理しておくと、手続漏れや遅れを防ぎやすくなります。
健康保険・厚生年金保険の資格喪失手続
健康保険・厚生年金保険に加入している社員が退職した場合、会社は「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届」を提出します。
退職による資格喪失日は、原則として「退職日の翌日」です。
たとえば、3月31日付で退職した場合には、4月1日が資格喪失日となります。
資格喪失届は、資格を喪失した日から5日以内に、事務センターまたは管轄の年金事務所へ提出します。電子申請による手続も可能です。
なお、協会けんぽに加入している事業所で、本人や被扶養者に資格確認書等が交付されている場合には、退職時に会社が回収し、資格喪失届とあわせて返納します。
資格確認書を紛失するなどして回収できない場合には、「資格確認書回収不能届」の提出が必要となることがあります。
退職日によって社会保険料が変わることがある
退職時の給与計算では、社会保険料を何月分まで控除するのかにも注意が必要です。
健康保険・厚生年金保険の保険料は、原則として資格喪失日の属する月の前月分まで発生します。
たとえば、3月31日に退職した場合には、資格喪失日は4月1日となるため、3月分の社会保険料まで必要です。
一方、3月30日に退職した場合には、資格喪失日は3月31日となるため、その会社では原則として3月分の社会保険料は発生しません。
ただし、退職後に同じ月のうちに別の会社で社会保険に加入する場合や、国民健康保険・国民年金へ切り替える場合などには、退職後に加入する制度でその月の保険料が発生することがあります。
また、月末退職の場合には、会社の給与締切日や社会保険料の控除方法によって、最後の給与から前月分と退職月分の2か月分を控除するケースもあります。
退職手続だけでなく、最後の給与から控除する社会保険料についてもあわせて確認しておきましょう。
雇用保険の資格喪失手続
雇用保険に加入していた社員が退職した場合には、「雇用保険被保険者資格喪失届」を事業所を管轄するハローワークへ提出します。
提出期限は、被保険者でなくなった日の翌日から起算して10日以内です。
手続の際には、退職日や退職理由を確認できる資料のほか、必要に応じて賃金台帳、出勤簿、労働者名簿、雇用契約書などを確認します。
特に退職理由は、失業等給付の取扱いに影響することがあります。
自己都合退職、会社都合による退職、退職勧奨、契約期間満了など、実際の退職理由と届出内容が一致しているかを確認することが重要です。
離職票が必要かどうかを確認する
退職した社員が失業等給付の手続を行う場合には、離職票が必要になります。
そのため、退職手続を進める際には、本人に離職票の交付が必要かどうかを確認しておくとスムーズです。
本人が離職票の交付を希望する場合には、会社は「雇用保険被保険者離職証明書」を資格喪失届とあわせてハローワークへ提出します。
なお、本人から「離職票は不要」と明確な申し出がない場合には、離職証明書を提出することが基本です。
また、離職日時点で59歳以上の社員については、本人が離職票を希望しない場合でも離職証明書の提出が必要です。
離職証明書には、賃金支払状況や離職理由などを記載します。離職理由によっては確認資料が必要になるため、退職届、雇用契約書、就業規則などを事前に整理しておきましょう。
退職後の健康保険について社員に案内する
会社の健康保険は、原則として退職日の翌日に資格を喪失します。
退職後すぐに別の会社の健康保険へ加入しない場合、退職した社員自身が新しい健康保険への加入手続を行う必要があります。
主な選択肢として、次の3つがあります。
- 現在加入している健康保険の任意継続
- 国民健康保険への加入
- 家族が加入している健康保険の被扶養者になる
協会けんぽの任意継続を希望する場合は、原則として退職日までに継続して2か月以上の被保険者期間があり、退職日の翌日から20日以内に申請する必要があります。
任意継続の加入期間は最長2年間ですが、現在は本人の申出によって途中で資格を喪失することもできます。この場合、原則として申出が受理された日の翌月1日が資格喪失日となります。
どの制度を利用するかは本人が選択するものですが、退職後の健康保険について案内しておくと、退職者もその後の手続を進めやすくなります。
退職後の年金手続にも注意
厚生年金保険に加入していた20歳以上60歳未満の社員が退職し、すぐに次の会社へ就職しない場合には、原則として本人が国民年金第1号被保険者への切替手続を行います。
一方、配偶者の扶養に入り、国民年金第3号被保険者となる場合には、配偶者の勤務先を通じた手続が必要です。
これらは原則として退職者本人が行う手続ですが、退職時に「健康保険や年金について、退職後に別途手続が必要になる場合があります」と案内しておくとよいでしょう。
退職手続で会社が注意したいポイント
退職時の社会保険・雇用保険手続では、単に届出書を提出するだけではなく、退職日や退職理由、給与計算などを正しく整理することが重要です。
特に、次の点には注意しましょう。
- 最終出勤日と退職日を混同しない
- 社会保険の資格喪失日を正しく設定する
- 離職票の要否を本人に確認する
- 59歳以上の離職者については離職証明書を提出する
- 離職理由を事実に基づいて記載する
- 最後の給与で控除する社会保険料を確認する
- 資格確認書等が交付されている場合は返却を確認する
退職手続が遅れると、退職者の健康保険や失業等給付の手続にも影響する可能性があります。
社内で退職手続のチェックリストを作成し、退職日が決まった段階から必要な手続を整理しておくと安心です。
よくある質問
Q.退職日当日まで健康保険を利用できますか?
原則として、会社の健康保険の資格は退職日まであります。
退職日の翌日が資格喪失日となるため、それ以降は退職した会社の健康保険を利用することはできません。
Q.離職票は退職者全員に必要ですか?
59歳未満の方については、本人から「離職票は不要」と明確な申し出があった場合には、離職証明書を省略することができます。
ただし、離職日時点で59歳以上の方については、本人の希望にかかわらず離職証明書を提出し、離職票の交付を受ける必要があります。
また、退職時には離職票を希望しなかった社員から、後日交付を求められることもあります。その場合には、会社で離職証明書を作成し、手続を行う必要があります。
Q.退職後の国民健康保険や国民年金の手続も会社が行いますか?
原則として会社が行う手続ではありません。
国民健康保険や国民年金への切替えは、退職した本人が市区町村等で行います。
ただし、退職者がスムーズに手続できるよう、退職後に必要となる手続について会社から案内しておくことをおすすめします。
まとめ
社員が退職したときには、健康保険・厚生年金保険の資格喪失届や、雇用保険被保険者資格喪失届などの手続が必要です。
また、離職票の交付、資格確認書等の返却、退職後の健康保険・年金、最後の給与から控除する社会保険料など、会社が確認しておきたい事項は多岐にわたります。
退職日が決まった段階で必要な手続を整理し、期限に余裕をもって進めることが大切です。
アーク社会保険労務士事務所では、社会保険・雇用保険の各種手続をはじめ、給与計算や日常の労務管理について、中小企業の実務に合わせたサポートを行っています。
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